ー複製技術の演劇ーパサージュ
作・演出/あごうさとし
【東京公演】
日時:2013年11月22日(金)〜11月24日(日)  会場:こまばアゴラ劇場
【大阪公演】
日時:2013年12月20日(金)〜12月22日(日)  会場:大阪府立江之子島文化芸術創造センター (enoco)
【京都公演】第9回アトリエ劇研舞台芸術祭参加作品
日時:2014年7月4日(金)〜6日(日)  会場:アトリエ劇研


2013年 こまばアゴラ劇場


2013年 大阪府立江之子島文化芸術創造センター


「演劇は原則的に複製可能である」
本作は、2012年より手がける、連作「パサージュ」の完結作品。演劇の複製可能性について、一連の実験作を通じて検証してきました。今回は、「演劇は複製可能である」という結論を導くための手法の構築をめざします。言い換えれば、演劇においての空間と俳優の存在を問い直す作業を行います。

主旨
■演劇の構成要件として「声」の存在が必須であるという仮説を実証する
■演劇作品に適した身体とは何か?を検証する

「ベンヤミン最期の30分」を演劇化 【上演時間約30分】
ポルトボウで、モルヒネ自殺をしたドイツの文芸評論家、哲学者、翻訳家、社会学者ヴァルター・ベンヤミンの最後の30分を演劇化します。今正に死を迎えようとするベンヤミンは、生死の敷居を超えて幼い頃から見えていた「せむしの小人」と対峙します。歴史を動かすせむしの小人は、絶えずベンヤミンの側におり、彼をまた死に導こうとします。それは小人を仲介者として同時に、救済の時間を告げるものでもあります。ここでいう救済とは、全ての忘れ去られた記憶が蘇ってくる時間というものです。忘れられた様々の記憶は、「物」を通じて、ベンヤミンの視界に入り込んできます。カフカのオドラデクのような、通常生きている人間には見えない造形が現れます。最後に、ベンヤミンの自我は解体され、記憶の中に溶け込んでいきます。その記憶とは、純粋言語とベンヤミンが呼んだ聖なるエクリチュールとして還元されようとします。

「せむしの小人」或いは「忘れられた記憶」
俳優不在という身体の欠如感を利用し、その場にいる観客の身体が時にヴァルター・ベンヤミンに、時に小人に時に記憶として登場します。観客には、観客席は与えられず、劇空間の任意の場所で鑑賞し、登場します。劇場空間において意識されていない観客の身体の意識化は、本作品の主要な登場要素である、「せむしの小人」或いは「忘れられた記憶」を現象化するのに最適の身体性だと予測しています。

「連作パサージュについて」
「パサージュⅠ」では、俳優のアウラは複製できるかという問いかけから始めました。実寸大のベンヤミンを演じる俳優(あごう)の「映像」が、主人公で、生のパフォーマンスは40分の上演時間中、ほんの5分程度のものでした。映像と生の俳優の役割を反転させた作品です。「パサージュⅡ」の主題は、観客の身体が、劇空間を担えるかという試みでした。現代美術作家のやなぎみわ氏がデザインした駅のプラットフォームを模した舞台美術。観客は、全員舞台上の任意の場所で、観劇頂くという趣向でした。プラットフォームで立ったり座ったりしているお客さんの中で、演技と演出を展開しました。お客さんの存在、気配、或いは照明や映像の光で壁一面に映し出される影は、駅で電車を待つ人々であり、ヒトラーの演説を聴く大衆であり、ベンヤミンにとりつく「せむしの小人」にもなるというものでした。
これらの取り組みを踏まえて、今作「パサージュⅢ」では、生のパフォーマンスを行う「俳優」を登場させずに、戯曲と演出と観客の存在だけで、演劇空間を紬だそうという試みです。


ヴァルター・ベンヤミン(Walter Benjamin1892-1940)
ユダヤ系ドイツ人の文芸評論家、思想家、翻訳家、エッセイスト。1935年に書かれた代表作「複製技術の時代における芸術作品」で、映画・写真などの複製技術における芸術・社会への影響を考察。第2次大戦中、ナチスから逃れるため、フランスからさらにスペインの亡命を企てるも、入国を拒否され自殺したとされる。


ースタッフ─ 2013年公演
作・演出:あごうさとし / ドラマトゥルク:仲正昌樹(金沢大学法学類教授)
舞台監督:浜村修司・中西隆雄 / 照明:池辺茜 /音響:小早川保隆 / 映像:三谷正(PixelEngine LLC.)/ 造形:原泰英 / 制作:井上美葉子(ARTCABINET)
主催:あごうさとし / 共催:大阪府立江之子島文化芸術創造センター / 提携:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 / 制作協力:アトリエ劇研
助成:公益財団法人セゾン文化財団 / 大阪市

ースタッフ─ 2014年公演
作・演出:あごうさとし / ドラマトゥルク:仲正昌樹(金沢大学法学類教授)
舞台監督:浜村修司 / 照明:池辺茜 /音響:小早川保隆 / 映像:三谷正(PixelEngine LLC.)/ 造形:原泰英 / 制作:井上美葉子(ARTCABINET)
主催:あごうさとし・特定非営利活動法人劇研,アトリエ劇研


■連作「パサージュ」
PechaKuchaNight1208「複製技術の演劇」連作「パサージュ」について(2013年12月8日プレゼンテーション/動画8分30秒)

passage1_03─複製技術の演劇─パサージュ について(2012年公演)

passage2_12─複製技術の演劇─パサージュ について(2012年公演)


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