ー複製技術の演劇ーパサージュ
作・演出・出演/あごうさとし

日時:2012年12月15日(土) 14:00~ / 16日(日)14:00~
会場:アートエリアB1(大阪府)
鉄道芸術祭Vol.2 やなぎみわプロデュース「駅の劇場」招聘作品


「はじめに声がある。あらゆる存在に先行して、声はある」
これはパサージュⅠの冒頭のセリフなんですが、ベンヤミンの言葉ではありません。
劇団に所属していた頃から考えていることでして、今回はこの「声」について、ベンヤミンのテクストの中で考察しようという試みです。
舞台は美術作家のやなぎみわさんが考察した、「プラットフォーム」が既に会場となるアートエリアB1に展示されています。この展示物の上で、演技をするのですから、客席も用意されていますが、今回は使用しません。皆さんも舞台にのっかってご自由にご覧ください。なにせ展示物なのですから、私も私の作品も展示してしまおうという試みでもあります。でも展示物ですから、お手は触れないようお願いいたします。
セリフ、忘れてしまうかも知れません。
これまた、「展覧会ベケット/パサージュⅢ」への布石でもあります。俳優の複製は可能だと「パサージュⅠ」で確信しましたので、次のステップにいこうというわけです。
演劇の複製化を思考する、アウラと声の物語です。


あらすじ
1940年ナチスの軍靴はいよいよ亡命先のパリにも、及ぼうとしていた。
「次の日が、次の時間が何をもたらすか、全く不確定であること。このことが、数週間から僕の生活を支配している。」
パリを離れようとプラットフォームで電車を待つベンヤミン。おりなす、回想と声。
そこで彼は、衝撃的なアウラに出会う。

よく知られている話だが、チェスの名手であるロボットが製作されたことがあるという。そのロボットは、相手がどんな手を打ってきても、確実に勝てる手をもって応ずるのだった。それはトルコふうの衣装を着、水ぎせるを口にくわえた人形で、大きなテーブルの上に置かれた盤を前にして、座っていた。このテーブルはどこから見ても透明に見えたが、そう見えるのは、実は鏡面反射システムによって生み出されるイリュージョンであって、そのテーブルのなかには、ひとりのせむしのこびとが隠れていたのである。このこびとがチェスの名手であって、紐で人形の手をあやつっていた。この装置に対応する物を、哲学において、ひとは想像してみることができる。「歴史的唯物論」と呼ばれている人形は、いつでも勝つことになっているのだ。それは誰とでもたちどころに張り合うことができる。もし、こんにちでは周知のとおり、小さくてみにくい、そのうえ人目をはばからねばならない神学を、それが使いこなしているときはには。

ヴァルター・ベンヤミン「歴史の概念について」より第1テーゼ  野村修訳


ヴァルター・ベンヤミン(Walter Benjamin1892-1940)
ユダヤ系ドイツ人の文芸評論家、思想家、翻訳家、エッセイスト。1935年に書かれた代表作「複製技術の時代における芸術作品」で、映画・写真などの複製技術における芸術・社会への影響を考察。第2次大戦中、ナチスから逃れるため、フランスからさらにスペインの亡命を企てるも、入国を拒否され自殺したとされる。

(パンフレットより引用)


─スタッフ─
舞台監督:大田和司 / 照明:池辺茜、吉田一弥 / 音響:西川文章、佐藤武紀 / 映像:三谷正 / メイク:原泰英 / 制作:アートエリアB1、井上美葉子(ARTCABINET)、平松繭子
協力:ARTCABINET、アトリエ劇研、大阪市立芸術創造館、カフェ・モンタージュ、PixelEngine LLc.、ロクソドンタブラック、やなぎみわ演劇プロジェクト
主催:京阪電車なにわ橋駅アートエリアビーワン運営委員会[大阪大学+NPO法人ダンスボックス+京阪電気鉄道(株)]
助成:おおさか創造千島財団、芸術文化振興基金 / 協賛:資生堂 / 技術協力:パナソニック(株)



撮影:井上嘉和


■連作「パサージュ」
PechaKuchaNight1208「複製技術の演劇」連作「パサージュ」について(2013年12月8日プレゼンテーション/動画8分30秒)

passage1_03─複製技術の演劇─パサージュ について(2012年公演)

アゴラ劇場にて─複製技術の演劇─パサージュ について(2013年公演)


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