純粋言語を巡る物語ーバベルの塔Ⅱー
作・演出 あごうさとし
テキスト 岸田國士「紙風船」「動員挿話」「大政翼賛会と文化問題」
【京都公演】
2015年12月18日(金)ー12月21日(月) 会場:アトリエ劇研
【東京公演】
2016年2月11日(木・祝)ー2月14日(日) 会場:こまばアゴラ劇場
撮影:井上嘉和
■タイトルにあります純粋言語とは、思いをダイレクトに伝えられる言語であり、バベルの塔崩壊以前の言語であり、
神と通信できる言葉でもあります。それは、その後分岐した全ての言語の中心点です。
この度の作品では、声、音、映像、照明、美術、すべてが劇場空間の中心に向かって構成されています。ご覧いただ
きましたらおわかりのように、ひな壇の客席などはありませんので、移動しながらでも、同じ場所からでも、
思いのままにご鑑賞ください。一番のおすすめの場所は、勿論白い舞台の中心です。そこに行くには、少々
勇気がいるかもしれませんが、どうぞお気軽に陣取ってください。周辺にいくにしたがって、当然環境は変わっ
ていきます。多分、お客様それぞれに、しっくりくる場所というのがあるかと思います。無いかもしれません。
■この作品は、隣のページの解説にもあります岸田国士の戯曲2 本と岸田が大政翼賛会文化部長に就任した当時
のステートメントをテキストとして使用しています。2 本の戯曲はいずれもひと組の夫婦が描かれています。(舞台
にあるヘッドフォンではドラマトゥルクの仲正教授の戯曲解説が聞けます。)
去る2015 年12 月5 日に私が席主を務めました、京都芸術センター明倫茶会「紙風船」にて、太田宏さんと武田暁
さんに実際に演じて頂きました。その演技を元に、今作は作られています。有人から無人へ変換するという意味での、
翻訳劇でもあります。
■作品の下敷きとなっているのはヴァルター・ベンヤミンの「翻訳者の使命」というテキストです。ここでは、全て
の翻訳は純粋言語を志向していると記されており、そうであれば、この度の翻訳劇もまた同じです。
■そもそもなぜ、こんな奇妙なことをするかと申しますと、
1, 演劇の複製可能性の追求、 2, 劇場空間における力学そのものに光をあてること、
3, 俳優とは何かを考える事、 4, 舞台作品のアーカイブの手法の模索、
というものになります。
*当日パンフレットより引用
岸田國士
・ 紙風船-1925 年
退屈な日曜日を過ごす夫婦の会話劇。静かな言い争いの中で夫婦は唐突に鎌倉旅行の「ごっこ遊び」
を始める。ステッキ、海浜ホテル、タクシー、バスルーム、カルピスなど、当時のハイカラな流行品が
会話の端々に数多く登場する。
・動員挿話-1927 年
日露戦争への出征の供を少佐に命ぜられる夫と、それを引きとめようとする妻という、戦時下の夫婦の
葛藤を描く。戦地に向かわなければ主従の縁を切るという少佐に対し、結果として主人に供すると夫は
決断する。その話を聞いた妻は絶望の後、何も言い残すことなく井戸に身投げをする。
・大政翼賛会と文化問題-1941 年
大政翼賛会とは、1940 年10 月12 日から1945 年6月13日まで存在していた日本の公事結社。
岸田が翼賛会文化部長を務めた際のテキストであり、文化政策、自由主義、教育などについての発言には右翼的な
思想傾向がある。大政翼賛会は国民総動員体制の中核組織として機能する。約二年間在籍した岸田は、これがため
終戦後に公職追放となる。
ースタッフー
作・演出 あごうさとし|テキスト 岸田國士|ドラマトゥルク 仲正昌樹(金沢大学法学類教授)
出演 太田宏(青年団)・武田暁(魚灯)
映像 山城大督|音楽 public on the mountain|舞台監督 浜村修司〈GEKKEN staffroom〉|照明 池辺茜〈GEKKEN staffroom〉|音響 小早川保隆|造形 吾郷泰英|映像助手 坂根隆介(ドキドキぼーいず)|宣伝美術 竹内幸生|制作 長澤慶太
主催|あごうさとし・アトリエ劇研/特定非営利活動法人劇研(京都) 提携|(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場(東京) 助成|芸術文化振興基金助成事業 京都芸術センター制作支援事業